千葉市の有機農園ベジカンの作業日記

農薬の話①(有機野菜は安全?安心?)

有機農業の方が、農薬を使った一般的な農業に比べて安全か ?」と聞かれたら、答えは「ノー」です。

安全か否か、というのは科学的なデータに基づいて判断される事であり、国によって指定された農薬を決められた範囲の中で使用している限り、一般的な農業も有機農業も安全性に変わりはないと言えます。

 

それに対して安心か否か、というのは個人の心情の問題です。

その為「有機農業の方が安心か?」と聞かれた場合は、私の答えは「イエス」です。

 

有機農業をやっていると、畑には無数の生き物が暮らしている事を実感します。

防虫ネットをしていてもどこからか入ってきてキャベツに産卵する蝶、植えたばかりの苗を食い荒らしていく土中のヨトウムシ、目に見える虫だけではなく小さな微生物まで本当に沢山の生き物が野菜の周りに存在しています。

 

農薬が彼らに与える影響の大きさを考えると、どうしても安心だとは思えません。

 

勿論、国や農薬メーカーの研究機関がきちんと調査をして安全性を確認している事は十分理解しています。

それでも、日々畑で過ごし、そこに暮らす生物の多様性を感じていると、農薬を使わないで育てた方が安心して食べられると思います。

 

だから私が無農薬栽培をしているのは、安全な野菜を作る為ではありません。

無農薬栽培の方が、自分が安心して、納得して野菜作りが出来るからです。

 

また、個人的な理由とは別に、有機農業においては「土壌の微生物と上手く付き合う」ことが最重要であり、微生物を活かすために農薬は使いません。

 

有機農家の中にも勘違いしている人がいるように感じますが、有機農業の目的は「農薬を使わないで野菜を育てること」ではありません。

 

「自然の力、生き物の力を活かして野菜を育てること」が有機農業の目的です。

無農薬はその為の手段の1つに過ぎません。

 

ここら辺の事についてはまた改めて書きたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで勘違いしてほしくないのは「農薬が良くない」と言いたい訳ではないという事です。

私自身、農業を始めた事で、農薬の功績、果たしている役割の大きさを実感したのも事実です。農薬なくして安定した食料供給は相当難しいでしょう。

 

「農薬が良くないから有機野菜を食べよう。」と主張したいわけではなく、一般の慣行農業で作られた野菜と有機野菜が違うものだ、という認識を持ってもらいたいのです。

 

 

有機農家の中には農薬を使って栽培された野菜を良くないもの、不合格品のように捉える方もいますが、私はそうは思いません。

慣行農業で作られた野菜も、有機農業で作られた野菜も食品としては「合格品」です。

それでは両方とも

 

 

 

 

 

 

 

もちろん自分が有機農業をやっているから、そう思いやすいという事も否定は出来ません。誰だって自分に都合の良い情報を信じやすいですからね。

 

正直に言うと、研修を始めた頃は有機農業をするか一般の慣行農業をするか迷っていました。

 

 

 

 

 

農業を始める前は農薬と言っても、虫を殺す訳ではなく野菜に近づかないようにする為の忌避剤なのだから、そこまで強力な薬剤ではないようなイメージでした。

しかし畑で虫達の生命力、なんとしても子孫を残そうという必死な姿を見ていると、それを防ぐ農薬というのはかなり強力な薬剤だなと感じるようになりました。

 

ここで難しいのが「だから農薬は危険だ!」とは言えないし、私もそうは思っていないです。

それだけ効果のある農薬ですが、その危険性は十分検証されており、決められた用法を守っている限り安全であると判断できます。

 

それでも「農薬使っても全く問題ないよね。安心だよね。」とは思えないのです。

 

科学技術は日々進歩しています。長年信じられてきた学説が覆されたり、数年前は出来なかった分析が可能になったり、新しい知見が増えていくものです。

それを考えると「現在の基準で安全なもの」が将来に渡って安全とは言い切れないと思いま

 

 

 

 

 必死に野菜に向かって来ようとする虫たちを薬1つで退ける事ができ、尚且つその薬が人体に対する影響はほとんど無い、というのは凄い事で、それらを発見した方々は研究者として本当に優秀だと思います。

大量の野菜を安定して生産する上で、農薬の存在がこんなにも大きく有難いものでありり、農薬によって外食産業なども含めた食品産業全体が支えられている、という感謝の気持ちは大きくな